いつか自らの思いを遂げる日のために -求められるイメージの檻の中で、心を殺さずに生きる方法-
中学生の頃、私が好きだった海外のロックバンドの多くが、メンバーの離合集散を繰り返す。
それが日常茶飯事でした。
お気に入りのバンドの新作をずっと聴き続けたい一心だった当時の私は、脱退していくメンバーに対し、「なんで辞めてしまうんだ」と不満を抱いていたものです。
「音楽の方向性が違うから」
「プロデューサーの商業主義的なやり方が嫌だ」
そんな理由に対し、「それくらい我慢しろよ。多くのファンが新作を期待しているんだぞ。そもそも売れなきゃダメじゃないか」…なんてことを思っていました。
しかし、大人になるにつれ、人は「自分の心を殺すこと」の苦しさを身をもって覚えていきます。
その時になって初めて、かつてバンドを脱退したメンバーたちの気持ちが痛いほど理解できたのです。
自分の本意ではないところで、自らの意思を表現しなければならない辛さ。
明確になってしまったズレの中で活動を続けることは、単なる「我慢」ではなく、文字通り「自分の心を殺すこと」に他なりません。
シンディ・ローパーのベストアルバム(Greatest Album)の1曲目には、「I'm Gonna Be Strong」という楽曲が収録されています。
「強くならなきゃ」という意味のタイトルです。
このアルバムの解説を読むと、彼女が活動の中でいかに様々な葛藤を抱えていたかが記されています。
世界的に大ヒットした「Girls Just Want To Have Fun(ハイスクールはダンステリア)」は、本来はもっとレゲエ調の曲だったそうですが、「これではヒットしない」とアレンジを大幅に変更させられたといいます。
そこに潜む複雑な思い。
そして、不本意な形で曲が大ヒットしたことにより、世間からのイメージが固定され、その後のキャリアまで決められてしまう苦悩。
自らの意思と異なっていても、求められるイメージに人は近づいていかざるを得ません。
これは、生きる上での大きな苦しみを生み出す要因になります。
「それは自分のキャラじゃないから」
現代でも、そんな言葉をよく耳にします。
たとえば学校のクラスの中で求められる姿。
それはその人のポジションであり、居場所を守るための防壁でもあります。
しかし、その役割に縛られてしまうと、今度は「キャラ変」が難しくなります。
新しいキャラクターを見せたとき、その場所で受け入れられるだろうかと恐れてしまうのです。
自分の思いで、自らのありのままの姿を決められないことは、本当に苦しいものです。
私たちは誰しも、社会の一員としての役割を求められる場面が多いです。
ですが、あまりに若いうちからそのことばかりを意識してしまうと、「本当の自分を受け入れてもらえる」という安心感を喪失することになります。
極端に言えば、いつも誰かの期待に応えるために作り上げた「キャラクターとしての自分」しか表に出せなくなってしまうのです。
かといって、本当の自分のまま傍若無人に生きることも、現実にはなかなかできません。
生きていく中で、私たちは本当の自分との「折り合い」をつける術を身につけていきます。
でも、そのちょうどいい塩梅、頃合いを定めるのは本当に難しいですね。
件のシンディ・ローパーのアルバムの最後には、「Girls Just Want To Have Fun」の、本来のバージョンと思われるトラックが収録されています。
「やるね」と思わずニヤリとしてしまいました。
いつか自らの思いを遂げる日のことを、彼女はずっと心に秘めていたのですね。
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