徹夜の読書と不純な動機。
吉行和子さんの訃報が報道されていた。
本日の日本経済新聞の1面コラム「春秋」も吉行和子さんの事だった。
中学生1年生の時、吉行和子さんのお兄さんにあたる吉行淳之介の著書「ぼくふう人生のノート」を読んだ。
徹夜で読み、母親から「徹夜で読んだのは、その本か…」と半分がっかりしながら、半分笑われながら言われた。
何気なく手に取った。
文庫だったので、中学生のお小遣いでも買えたのだと思う。
吉行淳之介さんのパーソナルな事は知らなかったし、ただ手に取った本が面白かったので読んでしまったのだ。
恋に恋する年頃であるが、大人の男女の、その未知の世界に引き込まれたのだ。
著作の中に引用され登場する文学作品もオペラも、まだ読んだり聴いたりした事がないものだった。
これ以降、その文学作品を読み、音楽を聴いても、この本と結びつけて記憶がよみがえる事はなかったと思う。
これまで読んだ本の中にはなかった著作の中の、ウェットな表現に惹かれた。
そんな言葉が、上手に女の子の前で使えたらいい。
かっこをつけるために読んだ。
そんな不純な動機だろう。
おそらく自宅の本棚にはあると思う。
読後の本はたくさん売ってきたが、そんなおぼろげな記憶が、この本を売る側にさせなかったのだろう。
本棚にあるその一冊は、単なる物理的な存在ではなく、当時の自身の心境や、あの夜の空気感を思い出させてくれる、タイムカプセルのようなもの。
吉行和子さんのご冥福をお祈りいたします。
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