恋愛

恋占い

2012012

しあわせな恋人同士は時として不安になる。
このまま、このしあわせが続いてほしい…。
このまま、このしあわせが続くのだろうか…。
あの人は本当に、私の事を大切に思っているか…。

そんな時、不安から占いに頼る事がありますね。

インチキ占い師の手法です。
占いに来た人にいくつかの問い合わせをします。
例えば「あなたは…好きな人には甘えるタイプでよね?」
ガビーン(昭和の表現です)。
これが、的中だったりします。

質問も誰にでも当てはまる様な質問を、その本人しか当てはまらない様な話し方で訊くのです。
すると、以後占い師が言う事は、自分をわかってくれた上で話していると、聞く方が誤解をします。
とっても素直な心で聴いてしまうのです。

営業場面でも、使い古された手法です。

でも、しわせを信じる互いの前に、占い師さんが不幸な結果を示したのなら…。
彼がこう言えばいい。

「運命だとしても、この結果を自分で変えてみせる」

悪い結果は忘れようとしても、心の片隅に残ります。
何か悪い事があれば「やっぱり、あの占いの結果が…」と考える事があるのは、不思議な事ではありません。
迷いが生じていれば、なおさらです。

しかし、彼が強い心で「あの結果は、俺が変えてみせる」と思っているならば、やっぱり彼女は彼を信用すると思います。
そのエネルギーの方が必ず強い。
「自分の思う運命は、自分でたぐり寄せる」
この強さに勝る、未来を切り拓く力は他にないでしょう。

いい占い師さんなら実はあえて、その力を呼び覚ます為に厳しい事を言うのかもしれません。

妻は私と結婚する前に、占い師のどこぞの母に「これから結婚するまでに3人現れるので、よく注意して選びなさい」と言われたそうです。
その話を聞かされた私は、こう答えました。
「私はひとりで3人分はあるので、次はもう現れない」
言っておきますが、体重の事ではありません。

織田信長の生涯を描いた「下天は夢か」に、こんな話が書かれています。

「若さま、古いしきたりを破るのは、考えものでござります。いかなる不運を招くやも知れませぬ」
信長はあざ笑った。
「不運がおそろしいか」
信長の身内で、憤怒が火花のようにはじけた。
林通勝は低く重い声音で、信長を脅かした。歴戦の老武者の意見には、おびただしい経験の裏づけがあるように思えた。
信長は一瞬、みぞおちに怯えを揺らめかせた自分に立腹し、頬に血のいろをのぼせ、林を睨めすえる。
「不運を招くとは何じゃ。戦にうち負け、死ぬことであろうが。死ぬのを怖れる侍は、生きておったとて、死んでおるようなものじゃ」

下天は夢か/津本陽

運命なんてぶっ飛ばせ

恋愛は全力で努力して、後悔は無し。

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日本経済新聞の夕刊。
そのコラム「プロムナード」を楽しみに必ず読んでいます。
先般、定期的な執筆者の交代で、山口恵以子さんの執筆も最後でした。



最後なので思い切り偉そうなことを書くが、夢や目標があったら全力で努力して下さい。
もちろん、成功する人はごく一部で、多くは夢に手が届かない。
それでも、全力を尽くした人は諦めることが出来る。
諦めは無用な執着と重圧からの解放であって、心を癒やしてくれる。
でも、カッコつけて全力を出さなかった人は諦めることが出来ない。
諦められない人は後悔する。
後悔は反省と違い、人の心を蝕み、幸せを遠ざける。


いつも心にフンドシ屏風 山口恵以子
2016/6/28 夕刊



山口恵以子先生の職業の変遷を書かれながら、この引用に続きます。
山口恵以子先生のお話しとは明後日の方向かもしれませんが、これは恋愛の真実というか、真理かなと私は考えました。
過去にお付き合いした方の顔が思い出せますか?
その時その時、やっぱり全力で好きになったけど、フラれてしまったら、そこで終わり。
消息を確かめようともしませんし、確かめられないし、確かめたくないし…ですね。

その点、今はフェイスブックを始めとするSNSで消息がわかる事は、ある意味辛い事です。
後悔を助長するし、忘れようと思っても、忘れられない事もありますね。

♪別れても、好きな人♪ではなく、♪別れたら、次の人♪。

恋愛はこれで良いのではないでしょうか。
私は今、過去にお付き合いをした方の顔を殆ど思い出せません。
それは、今が全てであり、最良であるべく、全力だからこそです。
…薄情なのかな。

全力で誰かを好きになる。
とても素敵な事ですよね。

白い服 白い靴

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東京に久しぶりの雨が降った日の事。
朝の通勤電車は遅れが発生しており、地下鉄も乗車間隔の調整で駅にいつもより長く止まります。
動いていない電車のつり革につかまりながら、ホームを歩く人を眺めていました。

ふと、気づいた事。
雨の日なのに、白い服の女性が多い事…。
夏が近づくと特別不思議な事ではありません。
白い服が増えるのは、男女問わずです。

松任谷由美さんの「ALARM a la mode」というアルバムに「白い服 白い靴」という楽曲があります。
昔の彼に偶然会った彼女が、その彼が立派になっている事にトキメキます。
彼女には大切な人がいるのだけれど、その事は言えなかったのです。
もう少し話をしていたい。
そんな思いから、来週会う約束をするのです。


さあ 明日は何を着てゆこう
ゆうべ何度も鏡に向った
白い服 白いロウヒール
結構 似合うと思って決めた

目覚めて外を見たらひどい雨降り
何も云えずに
服をたたんだ
予定ができたと電話を切った 雨降り

白い服 白い靴 / 松任谷由美


切ない乙女心が全開です。

アルバムはこの楽曲の後「土曜日は大キライ」です。
私はこの進行が大好きです。

「土曜日は大キライ」は俺たちひょうきん族のエンディングテーマでした。
とても楽しみにしていた番組で、楽しかったのと、その余韻が過ぎて行く週末の時間の速さを切なく、この楽曲に感じていました。
セピア色の想い出がよみがえりそうです。

地下鉄で肩をたたかれた
すっかり見違えてしまったあなた
元気です 次は乗り替えね
先に降りるのがつまらなかった

今はもう大切な人がいるのと
云えなかったの 楽しかったの
来週会うこと約束したの
あなたと

さあ 明日は何を着てゆこう
ゆうべ何度も鏡に向った
白い服 白いロウヒール
結構 似合うと思って決めた

目覚めて外を見たらひどい雨降り
何も云えずに
服をたたんだ
予定ができたと電話を切った 雨降り

白い服 白い靴 / 松任谷由美

その先にあるのは…。

立食形式の新年パーティーでの事です。
同じような顔ぶれで、同じ様な内容で、主催者が違う…というパーティーが続いていました。
少し疲れ気味でした。

会も中盤を過ぎた頃でした。
私は、私より少し年配の女性とふたりで、他愛もない話をしていました。
そこへ、30歳前後の共通の知り合いが話に参加してきました。
男性です。
便宜上、男性を花輪君(仮名)、私と話していた女性を吉澤さん(仮名)とします。

何がきっかけで、そんな話になったかはわかりませんでしたが、若かりし頃の恋愛の話となりました。
花輪君は独身です。
彼はこう言ったのです。

なんだか、恋愛は積み木と同じっていうか、積み上げると満足しちゃんうですよね。
積み上げてる時が楽しくて。
終わっちゃうと、次は壊したくなるんですよ。

積み上げ終わると、安定しますよね。
そうすると、この先に俺のしあわせはないなぁ…なんていつも考えちゃんうですよ。

吉澤さんは「若いわねぇ~」と笑っています。
私もニコニコして聞きながら、心の中で(こういう人と会うのは初めてじゃないなぁ)と思っていました。

帰路、地下鉄のホームで電車を待ちながら思いました。

しあわせは通常の繰り返しの日々の、退屈だと思う日常の、その先にあると私は考えるのです。
そして、その繰り返しの日々と、退屈だと思う日常が、実は数多くの偶然と奇跡の上に成り立っている事を思います。
志を半ばにして逝った仲間は、退院したら何をしようと思いをはせていた日から、やがて明日も生きていたい…その希望が変わって行きました。

そんな現実を突きつけられてからわかる事は、とても哀しい事ですね。
でも、繰り返す日常の中で、忘れてしまう事が多い事も否定できない事です。

花輪君、あなたに話す機会はないけれど、安定と思うその先へ進んでみてごらんよ。
触れれば、間違いなく傷つく心の柔らかいところまで、お互いの関係を深めてみるといい。
きっと、生まれてきてよかったと思う瞬間が来ると思うよ。
でも、その道は積み木を積み上げる事とは比較にならない程、きっと険しい茨の道だよ。

その先にあるのは…。

今日も今日も今日も 空は晴れ

Kaki

大切にしている万年筆を無くしました。
PARKERの青い万年筆で、赤い革の一筆挿しに入れていました。
お気に入りで、仕事のメモやお礼状など手書きの書類に愛用をしていました。
ひらがなを書く時の、文字の膨らみ具合など、とても気に入っていました。

通勤電車の遺失物センターにも問い合わせをしまいたが、届け物なし。
通勤で歩く道は、まるでお金を探すように目を凝らして探しましたが、見つかりません。
途中、雨の降る日もあり、「ああ、もう革のケースはダメだなぁ」なんて。

足元を見られる。
営業職である私には大切な事で、靴はいつもピカピカが信条です。
若い頃は「高いなぁ」と思いながら、自分への投資だと思い少し高い靴を無理して買っていました。

暑い日、寒い日、晴れの日、雨の日、嬉しい日、悔しい日…。
共にいろいろなところを歩き、手入れをしながら、大切に履いています。
一番長い付き合いの靴は15年前後の付き合いです。
新幹線や飛行機で、自分の足元できれいに光っている姿を見ては、悦に入る事もあります。

思いが長く、心が募る事がありますね。

自分の子供が誰かに愛されたり、誰かを大切にする事はいい事だなと思います。
その子(以後、ゆみちゃん・仮名とします)は小学校の入学式で息子(以後、タロウ・仮名とします)の隣の席になりました。
とても可愛い女の子です。
入学して、しばらくしてゆみちゃんがお母さんと我が家にお詫びに来ました。

ゆみちゃんが帰宅して折り紙を見たら、お母さんが買った覚えのない折り紙がありました。
それをゆみちゃんのお母さんが、ゆみちゃんに問い詰めると、隣の席のタロウの折り紙を持って帰ったとの事。
そんな事で菓子折りを持参し、ゆみちゃんはお母さんと誤りに来たのです。
妻は恐縮していたそうです。

当のタロウはどうかと言うと、折り紙がなくなった事など、気づいてもいません。
入学して間もない頃、ランドセルを玄関に置いたまま登校する子です。
学校でもいろいろなものをなくしましたが、本人曰く「だいたい、職員室の前の落し物箱に行くと、僕のあるんだよ」と悪びれず言います。
事実、この事は担任の先生との個人面談でも指摘をされたのです。

後から、ゆみちゃんのお母さんから聞く事ですが、ゆみちゃんはタロウに恋心を抱いていました。
ゆみちゃんは折り紙が欲しいのではなく、タロウの折り紙だったので持って帰ったのです。

ゆみちゃんとは小学校、中学校と同じ学校でした。
その後も、ゆみちゃんはタロウへ思いを寄せていてくれていました。

タロウは誰に似たのか、小学生の頃から毎日遊ぶ事に忙しく、そういう気持ちを感じてとれるところは、しばらくなかったと思います。
バレンタインデーでも、母親以外からチョコレートをもらえる事が嬉しくて自慢なそれだけで、その気持ちを理解するには、しばらく時間が必要でした。

中学校の近くの公園にゆみちゃんとタロウの相合傘の落書きがされました。
コンクリートの壁に、石で書いたのものです。
ゆみちゃんが、友達と公園で話をしていて、友達がそれを書いたのだと思います。

これが近所の無粋な人から学校に通報があり、ゆみちゃんは呼び出されて先生から確認をされ、怒られました。
誰だってつまらない授業の時に、自分の苗字と気になる子の名前を重ねたりする事をやった事があると思います。
ん~なかなかいい感じだな…なんてね。
ひとりで照れて、くねくねしたりします。

学校に通報するなんてつまらないと思いましたが、公園の近所に住む人にすれば楽しい事ではありませんね。。
タロウの名前があった事とゆみちゃんが怒られた事は、他のお母さんから妻が聞きました。

ゆみちゃんも、タロウも少女と少年になっていました。

ゆみちゃんは中学3年生のバレンタインデーで意を決します。
お母さんと手作りのチョコレートを作ります。
本人は思いが伝わるように。
お母さんはそんな娘の健気な思いを応援しながら手伝いをします。
私はそんな姿を想像するだけで涙が出ます。

ゆみちゃんの恋心は2月の空に吸い込まれて行きました。

どんなに大切にしていても、万年筆は壊れる事もあるし、なくしてしまう事もあります。
長い間思い入れがあるものこそ、失うと残念ですが、諸行無常のこの世では仕方のない事…と気持ちに折り合いをつけます。
でも、心の中でその事が大きなところを占めていたのならば、それがなくなった心の大きな空洞はなかなか埋める事ができませんね。

たくさんの思いがつまった部分が欠落してしまうと、その大きさに改めて自分で気が付く事があります。
残念な事は、それを失ってからでしたか気づけない。
そして後悔が伴ってしまう事ですね。
気持ちに折り合いをつけるのは、とても大変です。

ゆみちゃんにも、タロウにも素晴らしい恋をして欲しい。
人を好きになる事、誰かが自分を好きになってくれる事。
ちょっと苦い思いを重ねなながら、そんな事を知ってゆくのでしょう。
それは、誰もがいつか通る、そんな道ですね。

聞こえないはずの声がする
体中が痺れて裂けてく
「さよなら」と心だんだん離れていっても
君の仕草は忘れたくないんだ
明日の朝にはもういないんだね

今日も今日も今日も 空は晴れ

いつも自分に言い聞かせる
君の目にはもう僕はいないと
夜も朝も射す光はいつも同じで
確実に過ぎていった毎日
未来を夢見たあの日の僕

今日も今日も今日も 空は晴れ

aiko / キョウモハレ

人は不完全で、そして未完成

スカイラインのR32型は私にとっては、(生意気を言う様ですが)とてもじゃじゃ馬でした。
この車に乗っていたのは、30代前半です。
刺激的で、でも快適だった相棒です。
運転して、楽しい車でした。

R32_skyline014

しかし、一度暴れだすと、じゃじゃ馬は相当なもの。
当時、福岡に住んでおり、佐賀や大分、熊本の道を走りました。
次に乗ったR34型と比べると、当たり前ですがかなり荒削りの部分がありました。
だからこそ、そのR32の未完成具合に愛着がわきました。

【ソフトバンクロボティクスは6月20日、同日10時より販売を開始した感情エンジン搭載のパーソナルロボット「Pepper」が受付開始1分で完売したと発表した。】
livedoor NEWS 2015.06.20 11:13


これからも人の暮らしに、多くの場面でロボットは入り込んでくる事を予想するのは、難しくありません。
求められているところも、介護現場や、港湾の重労働の代わりなど、多数あります。
既に導入もされています。

私の現在の勤務先の工場にも、人型ではありませんが多数ロボットが導入されています。
その工場では、同じ仕事をするロボットに、女性の名前がついています。
工場のみんなが、現場での区別を行うために命名したと聞きました。

このロボットは感情を表現する能力はありません。
求められていません。
正確に、決められた分業をこなします。

【Pepperの感情と連動したロボアプリを用意】
softbank Pepper

このPepperは様々な感情表現が可能であるとの事。

「うきうき」という気持ちと、その対極の「つらい」という気持ちも持ち合わせているなんて。
きっと、いつも模範回答では、我々は疲れてしまうからだと思うのです。
おそらく我々は完ぺきな人型のロボットは求めていないと思います。
正論はもっともで、理解はするけれど、納得は出来ないのに似ている感じがします。

うれしくて、うれしくて、仕方がない時に、家庭のロボットに「調子に乗りすぎないように」と言われたら不愉快です。
さびしい時に、杓子定規に「強くなれ」と言われても、なんの助けにもなりません。

ドラえもんはネコ型ロボットですが、人間的で暖かい。
漫画の世界だと割り切っても、まさに人と同じです。
だからこそ、喜び、他人に共感し、怒り、哀しみ、失敗をする事を許容します。
ドラえもんを欠陥品という人はいないでしょう。

ドラえもんの能力なら、のび太くんの要求を完全無比に遂行する事が可能です。
しかし、その要求を断り、のび太くんにお説教をします。
誤解もします。

だからこそ、私たちはドラえもんが好きなのではないでしょうか。
完全無比の人型ロボットが現れても、我々はきっと欲しいとは思わないでしょう。

先日アポイントの時間まで、取引先近くのコーヒーショップで仕事をしていた時の事です。
店内で流れていた楽曲に心奪われました。
便利な時代で、スマホの楽曲検索アプリで調べて、帰りにCDを買って帰りました。

Taylor SwiftのEnchantedでした。
この楽曲が入ったSpeak Nowというアルバムです。

帰宅して妻に話すと。今頃知ったのか…てな具合です。
日本のテレビ番組の主題歌に楽曲が使用される事が多く、かなり有名だそうで。
ジャケットを見る限り、ずいぶん若そうだなと思ったら、やっぱり若い。
しかし、楽曲は粒揃いで、買ってお得なCDと思いました。

心奪われた「Enchanted」は、イントロのギターの音から「ん?」と感じたのです。
よくある表現でも、このギターの音にキーボードの音が重なり、彼女のささやくような歌声から始まります。
歌詞の内容と相まって、これがいい。




There I was again tonight
Forcing laughter, faking smiles
Same old tired lonely place

Walls of insincerity,
Shifting eyes and vacancy
Vanished when I saw your face

All I can say is it was enchanting to meet you

今夜もまた、無理やりに作り笑いをするの
いつもの退屈でひとりぼっち

不誠実な心に囲まれている
あなたを見た瞬間、うつろな気持ちと退屈は消え去ったのよ

私は、あなたに会って魔法にかけられたようなの

Taylor Swift / Enchanted
あやしい和訳:ケンシロウ



おじさんが女性の言葉で和訳するのは、気持ち悪くてもご容赦下さい。
気持ちを投射してみました。
ん~まさにこれが恋に落ちる時、恋する時、恋する気持ちです。

あばたもえくぼ。
相手に少々欠点があっても、その欠点が長所に見える事があります。
自分も不完全で未完成。
でも、それが魅力的に見える。

だから、相手が不完全で、未完成でも、それは大きな問題でない事があります。
そもそも、完全無欠な人を好きになるでしょうか。
完全無欠な人がいるのでしょうか。

大林宣彦監督の映画「さびしんぼう」。
小林稔侍さんが演じるお寺の住職が、その息子に語りかけます。

お前人を好きになったことあるか?
好きになれ。
その人の喜びも哀しみも、みんなひっくるめて好きになれ。

少ないこの言葉の中に、恋愛が成就する秘訣があると私は思います。

奥さんロボットが完成して、様々な事を完全無欠でこなしても、そのロボットは愛せない。
旦那ロボットが完成して、様々な事を完全無欠でこなしても、そのロボットは愛せない。

旅の記憶も、その旅での予測できなかったハプニングが、いい思い出になりますよね。
人は皆、不完全で、未完成だと私は思うのです。
そして、それが魅力です。

追記:この「Taylor Swift」の「 Enchanted」は恋する乙女心満載です。
今頃トキメイテいるのは…私だけですね。

元カレ、元カノ、元サヤ。

この時期になるといろいろな連絡が来ます。

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引越して住所が変わったお知らせ…。
職場が変わったお知らせ…。
不幸があり、年末年始の挨拶は…。

私を含め同級生は結婚して、それぞれおそよ20年が経過しています。
毎年、実家が送り先になる連絡、滅多にありませんが昔の苗字に戻る…そんな連絡があります。

元カレ、元カノ。
Facebookに代表されるSNSの利用で、元カレ、元カノの今の情報は比較的簡単に得られる環境にあります。
メールアドレスを変更していなければ、フト気がついた時に連絡をしてみたり…なんて。
想い出すきっかけがなければ、忘れてしまうのに、いつまでも想い出ではなく、今になってしまいます。

私はしておりません。
想い出は美しいもの。
想い出の中では、きっと現実より美しくなってしまう事がままあると思います。
もし、私が誰かの美しい想い出の中にあるなら、現実のおじさんはきっと、かなりしんどいはずです。
心配する必要はなさそうですけどね。
私は過去の事は思い出すのも恥ずかしい事が多く、埋めて蓋をしてしまいたい事ばかりですから。
そして私はバージョンアップするので、昔の私ではウィルス感染の危険があるのでダメです。

ついでに元サヤ。
別れたふたりがよりを戻す。
お互いにひとりになって、互いの大切さを理解する事もあると思います。

破綻前にドロドロの愛憎劇があったとか、同じ部屋にいるのも嫌になるぐらい嫌いになった事がある。
こういう経験はキツイ場面も多くあっただろうなと思います。

元サヤで交際を復活させた場合、付き合い慣れた人との安心感があると思います。
お互いに気心知るところもあり、やっぱりいいな…なんて癒されたりする事があります。
でも、破綻した原因に繋がる場面に再度立ったら、お互いの緊張感は結構なものだと思います。
そう考えれば、あまりいい事は無いです。

どうせなら、バージョンアップした新しい自分で、新し人と、新しい恋をした方がいい。

ところで、元カレは元の彼氏、元カノは元の彼女。
では、元の旦那は?元の女房は?
元ダンと元ニョウ。

響きが良くないですね。

涙の果実

二男が先日ゲームでドイツの女の子とチャットをしたとの事。
互いに共通の言語が英語であり、二男は中学2年生のレベルで、相手も決して英語は得意ではなかったようです。
最後にドイツ人の女の子から、「あなたの事が好きだ」と言われ、二男はハッピーモード全開でした。

昨日の仕事の終わりは広島県尾道市でした。
仕事が終わった後に時間が都合出来たので大阪へ戻る前に「おのみち映画資料館(http://www.bbbn.jp/~eiga2000/)」に立ち寄ってきました。
小津安二郎監督や新藤兼人監督の作品に関する資料が展示されていました。
そこには両監督の映画で主演を多く務めた「音羽信子さん」のポートレイトがありました。
ふと、そこに資料はありませんでしたが、尾道を映画のロケ地とした大林宣彦監督の「天国に一番近い島」を思い出しました。
過去のブログにその映画に関する記事がありますので引用します。

2009年11月29日 (日) 
誰かを愛した…その時の自分の心だけは決して忘れちゃいけないわね

「天国にいちばん近い島」に出演している乙羽信子さんの演技は秀逸であり、それ故にとても印象に残っているのです。
乙羽信子さんの役柄は、太平洋戦争で夫を亡くした未亡人役でした。
映画では南太平洋の夫が戦死した海へ、献花に行くシーンです。
その海域で「お国の貴金属供出にも出さなかった」指輪を「あなたにもらったものだから、あなたに返します。私だったと思って下さい」と海に投げます。
そこで、同乗している女性が問いかけます。

教えて下さい。
39年も経って、それでも忘れないっていうのはなんなんですか?

それはこんなお婆さんが言うと恥ずかしいんですが、愛ですわ。
それとも自分自身の誇りかしら。
誰かを好きになった。
その事への人間としての誇りね。
うまく言えないけれど、愛ってそういうもんじゃないかしら。
誰かを愛した。
その時の自分の心だけは決して忘れちゃいけないわね。
愛って結局は自分のための物語ね。

映画「天国にいちばん近い島」より

当時、私はこのシーンで涙が止まりませんでした。
誰かを愛するという事の崇高さ、愛し、愛される事が、人の誇りとして、人が生き続ける理由になる事に感動しました。
愛される事も、愛し続ける事ができる事も羨ましく、素晴らしいと思いました。
高校生に何がわかる…というところですが、本当に私は感動したのです。

…引用終わり。

日本経済新聞の日曜版に「愛の顛末/梯久美子」さんの連載があります。
先週2014年6月22日に三浦綾子さんのストーリーが記載されています。
一部抜粋します。
これは将来を誓った彼が自分の病気から長くは生きられない事を悟り、恋人である三浦綾子さんに心を残します。

「綾ちゃんは真の意味で私の最初の人であり、最後の人でした。(略)一度申したこと、繰り返す事は控えてきましたが、決して私は綾ちゃんの最後の人であることを願わなかったこと、このことが今改めて申し述べたいのです。
生きるということは苦しく、又、謎に満ちています。
妙な約束に縛られて不自然な綾ちゃんになっては一番悲しいことです」

遺書には、綾子が前川に書いた手紙と、前川の日記が添えられていた。

「焼却された暁は、綾ちゃんが私へ申した言葉は、地上に痕をとどめぬわけ。何物にも束縛されず自由です。これが私の最後の贈り物」との言葉が遺書にある。

5年半の交際の中で、二人は口づけ以上の関係に進まなかった。
自分の死を早くから意識していた前川が望んだのは、綾子がその後の人生を自由に生き、新しく愛する人を見つけてくれることだった。
そのための周到な配慮をして逝ったのである。

日本経済新聞 2014年6月22日
「愛の顛末/梯久美子」

逝くの者も、残される者も、とても辛い事です。
三浦綾子さんは哀しみの中です。
この後、残される者となった三浦綾子さんは、逝く者となった前川さんの一周忌を機に、前向きに生きる事を決心します。

誰かを愛した時に、とてもやさしくなった自分の気持ち…。
相手の喜びも、哀しみも、自分の事と思える事…。
誰かに愛された時の喜びや安心感、充足感…。
そして、生きる意味や喜びを感じる事…。

この人だ…と思っても、哀しい失敗を繰り返す事もあります。
この人じゃない…と思っていても、ある日、どこかで、その人の魅力に気づいたり。
言葉じゃ説明できない事ばかりですが、意識せず流れてきた涙で、そんな自分の気持ちに気がつく事があります。
いつだったか覚えがないのですが、大塚愛さんが「プラネタリウム」を泣きながら歌っていた時に、なんだかわかるような気がおじさんにもしました。
誰かを愛する、誰かに心から愛される…素晴らしい事ですね。

こんな夜は涙見せずに
また逢えると言って欲しい
忘れられない Heart&Soul
涙の果実よ

真夏の果実/サザンオールスターズ

「もう、忘れた方がいい…」

長野県松本市に出張した時の事です。
東京から朝一番早く到着するスーパーあずさ1号で松本駅に参りました。
取引先へ向かうのに、タクシー乗り場へ向けて駅の階段を下りている時、携帯電話がけたたましくなりました。
その時は本当にけたたましく、感じたのです。

電話の主は小学校の頃から兄弟の様にして育った友人でした。
彼は先日結婚したばかりでした。
素晴らしい結婚式で、職業が船乗りだから、やっぱり船上の結婚式となりました。

船乗りで1年の内、日本にいるのはわずかな期間だけです。
結婚後初の航海を終え、自宅に帰ると誰もいないとの事。
奥さんは「私が悪い」の1点張りで話にならないとの事でした。

これから取引先と商談がある旨を説明し、夜に再度連絡をする事としました。
その夜連絡をしましたが、話がとりとめがないので、近々に夕食でもしよう決め、その日の話を終わらせました。

東京で彼と夕食をしました。

彼自身には思い当たる事がなく、理由がわからない。
乗船中に急に連絡が取れなくなり、帰宅したら自身の荷物は引上げ何もない。
わずか1か月の事です。

「結局…」と彼はこの言葉を繰り返していました。
私は黙って、頷きながら聞いていました。

彼が「結局…」を1時間近く繰り返した後、私は言いました。

「結局って、何度言っただろうね」
「…」
「どこまで理由を考えても、きっとわからないな…」
「…」
「理由なんて、本当の理由なんてお互いにだってわからないのではないのか」
「…」
「きっと、明確なこれだという理由はみつからないよ」
「…でも、こんな事って」
「もう、忘れた方がいい…」

しばらく、彼は私をじっと見つめていました。
「話を聞いてもらえてよかったよ…」
彼はそれ以上、何も話さなくなりました。

彼の哀しみとさびしさが伝わり、たまらなくなりました。
「忘れてしまえ」殴り飛ばして、ふたりで子供の頃の様にケンカができたら、どれだけよかったか。

うつむいていた彼が顔を上げた時、大粒の涙が彼の頬をつたって行きました。
「ケンシロウ、なんで、どうして…」
「ケンシロウ、なんでこんなに涙が出るんだ…」
いくつもの涙が、大粒の涙がつたって行きました。

私は彼に、グラスがあふれるぐらいワインを注ぎました。

やがて彼は自分より10歳以上若い、新しい伴侶を見つけて結婚しました。
家族も増え、今は若い奥さんにすっかり参っています。

先日、大阪へ本人がひとりで来ました。
可愛い3人の子供の写真をうれしそうに私に見せます。

「俺から2度も祝儀をもらったのはお前だけだ。今日はご馳走しろ!」

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