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2018年4月

普遍的な価値に心震える時

若い頃、営業担当でよく移動中に見た景色などは、その時の思い出と結びついている事があります。
ここでクレームの電話を受け取った事があったな…。
ここで取引先の懇意にしていた窓口担当者から、会社を辞めるという残念な連絡があったな…。
取引先の事業譲渡交渉のスタートはここだったな…。
いろいろつきません。
場所と思い出が結びついています。

広島平和記念資料館を3度訪問しています。
最後に訪問したのは、約3年前大阪に単身赴任している時、休日を利用して行きました。
外国の方が多く、来館していました。

その時、たくさんの人がいるのに、管内は異様な静けさでした。
多くの外国の方が、いろいろな言葉に翻訳された資料解説の音声レシーバーを付けています。
レシーバーからの解説音声が聞こえる…と思うくらい静かです。
息をのんで、資料を凝視しています。

ここで、何があったのか…。
資料と解説音声が見ているその人の心の中で、その時にそこであった、その出来事を再現しています。

私も大好きな映画監督の大林宣彦さんが、NHKの番組で語っていました。
自分の映画を「ゲルニカ 映画」と呼ぶそうです。
自分の映画は100年後に見た人が、素晴らしいと思ってくれるとうれしい。
それはピカソのゲルニカの様に。
それが「ゲルニカ 映画」の語源との事。
ピカソのゲルニカは1937年のスペイン内戦中に、当時ナチス・ドイツ空軍がゲルニカに対して行った無差別爆撃を表現したものです。

大林宣彦さんは事故や事件の凄惨な現場の写真は、なかなか2度見ようという気持ちが起こりにくい。
ピカソのゲルニカは象徴的な表現。
「もしあれがリアルに描かれていたらたぶん後世まで残らなかったんじゃないか」
「象徴的だからどんな意味があるんだろうと考える」と感じている。
だから映画も「今分かるような映画じゃだめだ。100年後ぐらいに分かればいいんだ」と考えているとの事でした。
「ゲルニカ 映画」との思いは、そんなところにもあるそうです。

ピカソのゲルニカに並びに写真家ロバート・キャパの撮影した「崩れ落ちる兵士」。
頭部に弾丸が当たり、倒れる瞬間を撮影したとされる写真です。
ゲルニカと共に反ファシズムの象徴的な写真として位置づけられていたそうです。
この写真にも長らく続く論争がありますね。

ゲルニカは見る者に、多くの思いを想起させます。
映画は制作する人の意図やそれを超える思いを想起させる事があります。
写真はそこに映り込む事実に、様々な思いを想起させます。

誰かの作品は、その誰かの意思が込められている事に違いがないと思います。
様々な媒体からの刺激であっても、そこに普遍的な価値を見出す時、我々の心は震えるのだと思うのです。

Img_20180418_0001

画像はユニセフから発行されている機関紙の背表紙です。
タイトルの下に写真の解説文が掲載されています。

今、同じ空の下で

あたりに散乱する避妊具やティッシュは、ここで何が売られているかを語ります。
人身売買によってナイジェリアから連れて来られた女性の多くは、未成年。
生活は「元締め」に厳しく管理され、日が傾き始める頃には車で宿舎へと連れ戻されます。
シチリア島の夕景には、客を待つ彼女たちが座る椅子だけが残ります。

unicef news vol.257


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