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青いかご

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*写真と本文は関係ありません。

都内の大きな公園の近くに事務所がある、その取引先を夕刻に出ました。
公園沿いの歩道を歩きながら、蝉の大合唱を聞いていました。
今日はそのまま帰宅をするので、後輩と異なる路線の地下鉄の入り口へと向かいました。
入り口に向かう間にも、蝉の大合唱は聞こえていました。

入り口から階段を数段降りると、蝉の大合唱は聞こえなくなりました。
代わりに、それは家路を急ぐ人々が作る雑踏の音となりました。
暑い一日の終わり。
家路を急ぐ人々は無言です。

幼い頃、高知の祖父母のところへ行くと、祖父がいつも蝉を捕まえていてくれました。
蝉を見て、おっかなびっくり喜ぶ私のために、捕まえてくれていました。
いつも、青いざるの中に蝉はいました。

蝉も自分で捕まえる事ができる様になると、祖父が捕まえてくれていた蝉には興味が薄らいで行きます。
子供の1年。
成長も早く、関心事は次々に移ります。

私の後は3歳離れた弟が、青いかごの蝉をおっかなびっくり見ていました。
やがて、それは弟より3歳離れた妹の関心事となりました。
やっぱり青いかごの中に蝉はいました。

おそるおそるのぞき込む妹の様子を、目を細めて見ている祖父の姿に初めて気がつきました。
幼い妹の大きな黒い瞳が蝉の様子を見て、くるくる動いていました。
ひとつのシーンとして、ノースリーブのワンピースを着た妹が息を殺して、木の蝉を狙っている祖父の姿を見ている記憶があります。

今の住まいは山の上にあります。
最寄り駅から、いくつも坂を上り下りします。

とても静かです。
朝、近くの森からは鳥の声が聞こえ、出勤するために家を出る頃は蝉が合唱をしています。
蝉の鳴き声も、複数の種類が聞えます。
雨が降ると、雨の降る音がよく聞こえます。

休日の夕刻。
ひぐらしの声に、一日の終わりを感じます。
音楽を聞いていると、音楽と音楽の間に、ひぐらしの声が聞こえる事がありました。

青いかごはないけれど、愛しんでくれた祖父の気持ちがよみがえります。

I do recall now the smell of the rain
Fresh on the pavement
I ran off the plane
That July 9th
The beat of your heart
The jumps through your shirt
I can still feel your arms

あの時の雨の香りがよみがえる
舗道は雨に洗われている
わたしは飛行機を飛び降りて
それは7月9日
あなたに飛び込んで 鼓動を感じた
あなたの腕の感覚がまだ残っている

Last Kiss / Taylor Swift
あやしい和訳:ケンシロウ


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