税と格差の根源はどこに? 卑弥呼の時代から「サピエンス全史」が問いかける人類の苦悩に思う事。
選挙が近くなると、必ず減税の話が話題になります。
各方面から思惑がにじむ様々な発言が有り、マスコミもこぞって取り上げます。
小学生で歴史の勉強を始めた時、邪馬台国の卑弥呼が税金の仕組みを導入していた説明がありました。
それは自然発生的に出た話かもしれませんが、幼い私には「思いついた人がすごい!」と思える事でした。
フランスの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏の著書「サピエンス全史」で論じられているのは、この事に始まる人類の苦悩です。
狩猟生活から農耕生活への移管が、人類の歴史における「分断」の始まりです。
人類の歴史を振り返ると、私たちの社会が抱える多くの問題の根源が、ある決定的な転換期に見えてきます。
それは、狩猟採集生活から農耕生活への移行です。
一見、進歩と見えるこの変化が、実は人類に「分断」をもたらすきっかけになったのかもしれません。
喜びも悲しみも分かち合う事の出来た狩猟採集の時代。
かつての狩猟採集社会では、人々は獲物を追い、木の実を採集して暮らしていました。
その日暮らしが基本で、獲れたものはその場で皆で分け合うのが常。
貯蔵という概念も希薄だったため、「私だけのもの」という所有の意識はほとんどありませんでした。
獲物が多ければ皆で喜び、少なければ皆で飢えをしのぐ。
そこには明確な貧富の差や格差は生まれにくく、人々は互いに協力し合い、助け合って生きていました。
現代の私たちが憧れるような「喜びも悲しみも分かち合う」という共同体の精神が、色濃く息づいていた時代だったと言えるでしょう。
そして、農耕は「所有」と「格差」の芽生えをもたらします。
しかし、約1万年前、人類は決定的な変化を迎えます。
それが農耕の開始です。
人々は定住し、穀物を栽培するようになりました。
そして、この穀物を貯蔵するという行為が可能になったことが、すべてを変え始めます。
余剰の食料を貯めておけるようになったことで、「所有」という概念が生まれました。
土地の豊かさや労働力の違いによって、収穫量に差が生まれると、「持てる者」と「持たざる者」という区別が明確になっていきます。
これが、貧富の差、ひいては社会的な格差や差別が生まれる最初の土壌となります。
そうして広がる「疑心暗鬼」と「嫉妬」
富の偏りが生じると、人々の心にはそれまでになかった感情が芽生え始めます。
「なぜあの人だけが豊かなのか?」「自分はこんなに頑張っているのに」
このような比較から、疑いや嫉妬といった感情が広がり、それまでの共生意識は薄れていきます。
個人の利益を優先する傾向が強まり、共に喜び、共に悲しむという、かつての分かち合いの精神は、徐々に希薄になっていったのです。
この事を後戻りできない事を承知しながら、「サピエンス全史」が問いかける人類の選択に改めて考えさせられました。
この人類史における大きな転換点と、それに伴う社会の変化は、フランスの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏の著書「サピエンス全史」でも詳しく論じられています。
ハラリ氏は、農耕革命を「史上最大の詐欺」とまで呼び、人類が本当に幸福になったのかどうかを問いかけています。
確かに、農耕は人口を劇的に増やし、文明の発展を促しました。
しかしその一方で、所有の概念を生み出し、格差、差別、そして人々の心に疑心暗鬼や嫉妬といった感情をもたらしたのも事実です。
そして、この仕組みを維持するポイント。
ハラリ氏は、貨幣、国家、法律、そして宗教といった「虚構」(共通の物語や信念)が、大規模な協力と社会の組織化を可能にしたと説いています。
しかし、この「虚構」が、しばしば想像上のヒエラルキーや差別を生み出す要因にもなったと指摘しています。
農耕社会で生まれた所有や階級も、この「虚構」によって支えられていった側面があります。
今、世界ではレアアースや水、必要な資源を求め争いが続いています。
避けて通れない、この歴史的な転換点をどう捉え、現代社会に蔓延る格差や分断の問題をどう解決する。
例えば身近な小さな集団である家族、学校、会社の中ですら、同様の問題があります。
知の巨人たちには、この地平の果てが見えているのでしょうか。
« 「ひとりぼっち」が、誰かを救う光になる時。「夢の帰る場所」と、分かち合える孤独。 | トップページ | 答えの出ない問いと「考え続ける力」について。 »
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- 1歳という奇跡の日に想う、命を寿ぐということ。(2026.06.25)
- 福岡の空、遠くの孫 ― 亡き義父の記憶を呼び起こしたテレビの言葉。(2026.05.21)
- 生まれてきてくれて、ありがとう。(2026.05.14)
- 攻撃しない距離を保つ。(2026.05.13)
- 自分を一番わかっていないのは、自分かもしれない。(2026.05.12)
「思い」カテゴリの記事
- 生まれてきてくれて、ありがとう。(2026.05.14)
- 見えない綱渡りの方が、迷いなく進めるのかもしれない。(2026.04.28)
- 記憶の底に隠した一冊 ―『呪いの館』と『ミルキーウェイ』―(2026.04.24)
- 8メートルの譲り合いと、心の余白。(2026.04.23)
- 3番と13番 ― フォークリフト講習の記憶。(2026.04.21)
「読書」カテゴリの記事
- 記憶の底に隠した一冊 ―『呪いの館』と『ミルキーウェイ』―(2026.04.24)
- 映画「きみはいい子」、痛ましいニュースから考える「誰かを救う力」の事。(2025.09.29)
- 徹夜の読書と不純な動機。(2025.09.11)
- 夏休みと読書感想文、そして宮沢賢治「よだかの星」が問いかけるもの。(2025.07.23)
- 税と格差の根源はどこに? 卑弥呼の時代から「サピエンス全史」が問いかける人類の苦悩に思う事。(2025.05.27)
« 「ひとりぼっち」が、誰かを救う光になる時。「夢の帰る場所」と、分かち合える孤独。 | トップページ | 答えの出ない問いと「考え続ける力」について。 »




コメント