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2023年11月 8日 (水)

でも彼は、そこに間違いなく存在しています。

Akatsuki200

でも彼は、そこに間違いなく存在しています。

ショッピングモールへ出かけても、冷やかしばかりです。
柔軟性を欠いてきているこの頃では、身に着けるものも粗方傾向決まっています。

冒険をする事が、少なくなりました。

書籍やCDも、ネットで購入する事が圧倒的です。

書店は見ていても楽しいのです。
しかし、家には以前に買い込んだ書籍が山積みになっていると思うと、買う決断が鈍ります。

11月にしては、暑すぎます。

風通しの良い飲食用のオープンスペースで、座席を確保し一息。
ぐるりと見まわすと、クレープやたい焼きの他、ラーメンにうどんのチェーン店。
食事も出来ます。
たまたま一緒に来ていた二男が、退屈そうに座る私を見つけて同じテーブルの椅子に座ります。

「暑いな」と私。
「11月とは思えないよ」と二男。
「31アイスクリームあるんだな。しばらく食べてないけど、食べたいな」と私。
「買ってくるよ」と二男。

財布から、二男に2人分の現金を渡します。
どれがいいかとネットのメニューを見せられ、「ロッキーロード」をお願いしました。
手際がいいな。

カップいいのかとか、シングルかダブルかとか、やけに詳しい。
31アイスクリームのポイントカードを持っているとの事。
(そんな、よく食べるんだと)と少し驚きを持って、二男の顔を見る私。

美味しい。

しばらくして、となりのテーブルに私より少し若いと思われるご同輩(以後は彼とします)が座りました。
食パンを1斤持っています。
どこのスーパーにも市販されている、有名メーカーの6枚切り食パンです。

レジ袋が有料になってから、商品をそのまま手に持っている事は不自然ではありません。
コンビニでそれだけ買ったら、袋に入れないで手に持つ事もよくあります。

しかし、その彼は食パンのあの独特のクリップ(バッグ・クロージャー)を外し始めました。
一枚づつ、小さなサイズに切りながら、口に運びます。
よく噛みながら、眼を閉じて食べています。
とても味わいながら…という感じです。

勿論、焼いてもいないし、バターもジャムもつけていません。
何か挟んでいるわけでも、ありません。

少し手を止めて、どこから何か紙片を取り出しました。
どうやら手紙の様です。
何度も何度も読み返したのか紙片は少し、くたびれていました。
しばらく食べるのをやめて、その紙片を見つめています。

紙片を大切にポケットに収め、また袋から食パンを取り出し、食べ始めました。
休日の14時頃。
まだ、ショップでそれぞれ買い求めた遅い昼食を食べている家族連れが、たくさんいます。

4人掛けのテーブルにひとりで座り、眼を閉じて食パンを黙々と食べる。
周辺には子供の声や、誰かが誰かを呼ぶ声、お店の人の声、お店から聴こえてくる音楽。
その彼とは、そぐわない景色や音が満ちています。

私以外の誰も、そこにいる人を気にかけていない。
彼も、周りの事は目にも見えない、音も聞こえない…といった感じです。

食パンを全て食べ終えると、大きくため息をひとつ。
少し目を閉じて、動きが止まっています。
やがて、ゆっくり目を開けると、袋を小さくしばり、立ち上がりました。
椅子とテーブルを整えます。
少し離れたゴミ箱に袋を捨て、別の方角へ歩いて行きました。

ここのどこかで、働いている人だろうか。
節約のために、昼食は食パンのみと決めているのだろうか。
この場所で、ひとりで食べなければならない事情があるのだろうか。

でも彼は、そこに間違いなく存在しています。

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