時間を超越する。
夏休みの宿題は何時だってギリギリでした。
始業式には宿題に提出がないと知れば、それはアディショナルタイム。
始業式が土曜日で、日曜日があると逆転のチャンス。
仲間同士で終わらせた宿題を確認していました。
ところが誰もが同じ考えなので、当てにしていた者同士も顔を見合わせます。
「なんだよ!お前もやっていないのかよ!」
アディショナルタイムもやっぱり…全力です。
学生時代は有り余る時間を無為に過ごしていたと思っていました。
友達と飲んだり、食べたりしながら、ロクでもないツマラナイ事を話していました。
でも、それは必要な時間であり、大切な財産となっています。
自分と違う人がいる。
自分とは異なる考えがある。
違う人間同士が理解するには、どうしたらいい。
そんな時、そんな事を考えられなかったのですが、とても大切な積み重ねだったと思います。
時間の観念を意識したのは「ホーキンス、宇宙を語る(スティーブン・W・ホーキング著 早川書房)」を読んでからだと思います。
大学に入学した頃に、読んだと思います。
絶対時間、絶対的未来、現在、絶対的過去。
初めて触れる概念に、多くの刺激がありました。
宇宙。
高校時代も物理で記憶にあるのは、担当教師の変わった風体と声。
「俺はレディーキラーだ」と言った教師の言葉が理解出来ず、親父に「レディーキラーってなに?」と聞きました。
「女(女性の心)殺しだよ」との返答。
益々つまらない教師だと思いました。
授業は嫌いだし、わからないし、テストの成績は悪いの三重苦です。
しかし、この書籍は面白く読みました。
時間に始まりがある…これは新鮮だったのです。
それから、ダリや岡本太郎(いすれも敬称略)の概念。
時間なんて、人間が便宜上決めたに過ぎない。
自然の摂理は人間の尺度とは無関係。
時間に対しそんな捉え方があるのかとこれも衝撃的でした。
学生時代から何もしないでボーっとしているのは苦手でした。
元々読書は好きなのですが、通学や通勤の合間にも本は読んでいました。
その代わり、今のそうですがミルクのみ人形に同じく、横になると目を閉じ、直ぐに寝入ってしまいます。
社会人になってからは、大きく変わりました。
〆切のない仕事はありません。
いつも、その〆切をゴールに、様々なスケジュールや予定を決め、それを履行して行きました。
結婚し、子供にも恵まれ、その成長を見守ります。
猛烈なスピードで、日々が過ぎて行きます。
仕事は大変な中でも楽しみを見出し、同じように日々が猛烈なスピードで過ぎて行きます。
50歳を過ぎ、間違いなく人生の折り返し地点を過ぎ、妻や子供にも、これとこれをやっておかなければとメモがあります。
いつか読んだ経営本を読んだ時に刺激され、自分メモを作りました。
癌に罹患している事がわかりました。
死は誰もが等しく約束され、避ける事の出来ない事。
人間の宿命。
自分の順番はまだ来ないと思っていたのに、突然にそれを突き付けられた思いでした。
その事実と向き合った時、まだ倒れる事は出来ない…強い気持ちが湧いてきました。
しかし、終わりがある。
自分の時間が終わるという事を、強く意識せざるを得ませんでした。
様々な人の支援を受けながら、治療に臨みました。
幸いにも大事には至らず、治療を終えて日常を過ごしています。
私は音楽が大好きです。
学生の頃から集めたCDは、結構な枚数になりました。
それを1日に1枚づつ聴いても、たくさんの時間が必要です。
お気に入りの楽曲の、この心震える部分を、あと何回聴けるだろうと考える事があります。
そんな事も時々考えるようになりました。
終わりを意識すると切なくなります。
でも、それは絶望ではなく、その時間をより大切に愛しく思う様になっただけです。
人に与えられた時間は有限ですが、いつも終わりを意識していては、何も始まらないと思うのです。
明日は、こうする。
明日は、ここをガンバル。
明日は、きっといい日。
それが時間を超越し、人を活かす道ではないかと思うのです。
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