ただ一人にだけ年賀状を書きます。
二男のアスペルガー症候群を見抜いたのは、小学校へ入学した最初の担任の先生でした。
ベテランの先生で、日常の様々な動作を観察し、個人で千差万別な傾向を見極める事が出来たのは凄いなと思いました。
まもなく若年で頭角を現す有名な先生になられます。
その後、3年生からは新任の先生に担任としてお世話になりました。
明るい方で、親からすると手がかりますが、よろしくお願いします…という感じでした。
しばらくして、嫌な噂を耳にしました。
二男は手がかかるので、何も知らない新任の先生にお任せした…との話です。
しかし、本人は学校へは楽しく通学しておりました。
通級で苦手なコミュニケーションの訓練を始めました。
その事も非常に理解を示して下さり、通級の先生と担任の先生との連絡もスムーズでした。
本人が良い環境にあり、そんな悪い噂など気にしませんでした。
結果、二男はその先生に4年間卒業までお世話になりました。
卒業式前、妻が学校へ行った際に先生にご挨拶をすると、ふたりとも涙がとまらなかったそうです。
そして、卒業式。
クラスで身長が一番高い二男は、卒業式の後に校庭に作られたアーチをくぐるのは一番最後でした。
アーチの出口で、卒業生が先生と言葉を交わします。
二男は最後です。
先生と両手で握手をしながら、こう言いました。
「もう会う事もないかもしれないけれど、大変お世話になりました」
それまでニコニコしながら児童と言葉を交わしていた先生は、途端に顔を覆い隠して泣き出しました。
その先生の転勤と二男の卒業は同時でした。
それは先生の希望での異動でした。
先生は二男の様な児童をアシストする学校へと転勤したのです。
二男は中学へ入学した後、様々な問題に直面しました。
とても辛い思いをしました。
今年は成人式です。
親族や家族からお祝いをされました。
残念ながら、皆で集まって祝宴という事は出来ませんでした。
お祝いしてくれたおじいちゃんとおばあちゃんに生まれた頃からのビデオを編集したものを贈る事としました。
二男の年齢だと、生まれた当日からのデジタル映像が残っています。
それ故に編集も大変で、しかも長くなるので、乳幼児の頃、幼稚園と小学校、中学校と高校に大学入学までと区別しました。
連続で観るのは、いくら可愛い孫でも一苦労です。
大変だった中学校と楽しかった高校。
そのチャプターの終わりに利用した楽曲は、ONE OK ROCKの「Stand Out Fit In」です。
自分の心を殺さなくても、自分らしく生きてゆける場所。
自分の心を開放する術。
そんな場所を自分で作り上げる事ができる事。
はみだして なじめ
それは親父から成人した二男に贈るメッセージです。
新年の挨拶もLINE世代の二男。
そんな二男が、ただ一人にだけ年賀状を書きます。
それは、お世話になったその先生です。
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ケンシロウさん、こんばんは。
次男さんも色々と経験を重ねて成人式を迎えたのですね。父としても大変だと思いますが、その子がケンシロウサンを「父にしてくれた」と思います。
いい内容で、読みながら私もウルウルとしてしまいました。素敵な出会いは大切です。ただ1人のための年賀状で、とても大切な方への年賀状ですね。
投稿: omoromachi | 2021年2月 5日 (金) 21時22分
omoromachiさん、こんばんは。
コメントありがとうございます。
二男が私の人生を、より豊かにしてくれた事は間違いありません。
彼の成長をうれしく、たのしく思っています。
二男がこれからも出会う多くの人と、素晴らしい経験ができる事を祈っています。
投稿: ケンシロウ | 2021年2月 6日 (土) 00時04分