台風の様な暴風の中、湾岸線を千葉から東京方面へ走ります。
ICの構造で立体となっているところで、高潮の如く水が降りかかります。
一瞬、視界が奪われます。
もう走る車も少ない湾岸線で、横浜方面へと向かいます。
タイヤハウスの中で大きく水がはじけた音が響きます。
しかし、私の愛車は何事もなく、レールがある様に、コーナーをしっかりトレースして行きます。
私の意志と共に一体になって走り、私はドライブする楽しみを味わっています。
激しく動くワイパーと生き物の如く動くタコメーターの針。
自身が上げる激しい水しぶき。
大きなトラックを追い越す時の霧状の水しぶきをはじき飛ばし、霧の中から道を切り拓きます。
子供の頃、車で出かけると高速道路を走る時の独特のエンジン音にしびれていました。
スカイラインです。
記憶にないぐらい小さな時の写真に、親父と私とスカイラインGTB(S54B)が写っています。
箱スカ(PGC10)から記憶にあります。
高速道路である一定の速度を超えると、耳に届く独特の高い金属音。
この音にシビレてしまったのです。
それから親父が箱スカの次に乗ったのが、スカイラインジャパン(HGC210)です。
親父が最後に乗ったスカイラインがこれで、これを親父から私が免許取得と同時に譲り受けました。
重いクラッチ。
鋼鉄の塊の様なボディー。
セカンドで2,000回転を超えるところから聞こえてくる豪快なサウンド。
当時、世相にはバブルの予兆があり、ホンダのプレリュードがとっても人気がありました。
免許を取る前に、友人に真っ赤なプレリュードがいいなぁと話したところ、ミーハー過ぎると言われた記憶があります。
ローワイドホルムや4WSなど、こんな車でデートしたいなぁ…なんてね。
比較すれば、最初の愛車は当時からすると西部警察の遺品みたいでした。
当時スカイラインはR31の後期型が、インターテックなでのツーリングカーレースで勝利を得始め、栄光の復活などと言われていました。
しかし、このスカイラインジャパンは運転する楽しみを私に教えてくれました。
そして、もう一つの目的。
意中の女の子を誘い、葉山のレストラン「マーロー」へと行きました。
免許を取得したばかりですから、信用がありません。
助手席に乗った彼女が交差点の右折レーンで、まるで私が突然襲いかかったか、生命の危機に瀕した時の様な悲鳴を上げてくれました。
よっぽど必死に映ったのか、高速道路の行き先別レーンチェンジが終わると、拍手を頂きました。
マーローの駐車場ではサイドミラーを擦りました。
…その恋は成就しませんでした。
いいんだ、いいんだ。
俺にはスカイラインがある。
残ったのはサイドミラーの傷と私の心の傷でした。
最初の愛車との別れは突然でした。
線路を越える陸橋で、死角となった部分に停車車両があり、フルブレーキングでも間に合わず追突しました。
ブレーキしながら、前のめりで入っていた車は目の前のマークⅡの下へフロントを入れ、車を持ち上げながら追突しました。
エンジンは私が止めるまで、止まりませんでした。
しかし、自走は出来ない状況です。
レッカーで駐車場まで帰ってきた車をしばらく見ていました。
わずかな電灯に照らされ、無残に砕けたフロントマスクでたたずんでいます。
ピチョン…。
ラジエーターオイルと思しき液体が駐車場に落ちた音が響きました。
ゴメンな…痛かっただろうな。
豪雨の湾岸線を走った時。
蓼科の山間部を走った時。
高速を走った時…いろいろ思い出が過ぎります。
私は無傷でした。
車で最も重要な安全性が証明されたよ。
私はかすり傷ひとつないよ。
ありがとう…お礼をいいました。
それからはすっかりスカイラインに惚れ込みました。
バブルの中で就職をし、R31型の後期型を購入しました。
高い金利の自動車ローンを少ない給料の中から、ヒイヒイ言いながら払いました。
この車はスタイルが好きでした。
ハードトップでボディ剛性には少々心配になる事がありましたが、RBの改良されたエンジンは刺激的でした。
エンジンは一気に吹き上がり、1??㌔までGOです。
当時、1本4万円もする高いタイヤを履き、その走りは私を虜にしました。
この車はローンも終わって、弟に譲りました。
そして…R32後期型ツインカムターボのTypeM。
これは傑作でした。
神経質な女王で、故障の多さには泣かされました。
転勤で共に九州へ行きました。
有明海を島原から熊本へフェリーで渡ったり…。
別府の山中で、雪に降られ立ち往生したりと思い出も多くあります。
意のままに動く、素晴らしい車でした。
しかし、一度じゃじゃ馬ぶりを発揮すると、簡単に言う事を聞いてはくれなくなりました。
スカイラインはR34型が最後です。
この車に関連する事は別の記事で書きたいと思います。
その後、スカイラインは少し車の性格が変わったのと、そろそろ親孝行や子供が成長する事を考え、断腸の思いで断念しました。
今はエルグランドです。
アルファードとエスティマと比較し、子供達の「これがいちばんいい」で決めました。
妻からは「あなた、スカイラインがなくなっちゃうと元気が無くなっちゃうけど、本当にいいのね」と何度も確認されました。
なかなか可愛い車です。
V6 3500のエンジンは豪快ですが、2㌧の車重を引っ張るにはこれくらい強い心臓が必要です。
このエンジン、スカイラインにも使用されているのです。
ふふっ…。
しかし、リッター5㌔の燃費には泣かされます。
60㍑のタンクにハイオク仕様で、このご時勢では涙が出るってもんです。
ウルトラマンに出てきた、石油怪獣ぺスターみたいなもんです。
トホホホ…。
このエルグランド、私は大和と名づけています。
私の大好きな戦艦大和からとっています。
大和は太平洋戦争で航空機が主流となってからは、無用の長物とされてきました。
世界最大の戦艦で、燃料もたくさん必要でした。
エルグランドはハイブリッドのエコカーブームが主流の現代にあって、稀有な存在です。
大きくて燃料がたくさん必要なところが、似ています。
でも、運転席から3列目のシートまで乗り心地は最高です。
先日、ミラーを電柱にぶつけてしまいました。
スターバックスのコーヒーを片手に、片手ハンドルで中央車線のない細い道でした。
ミラーウィンカーのカバーを一部破損しました。
…片手ハンドル油断しました。
自分の能力の過信と戒め。
しばらくウィンカーは応急処置のテープのみです。
ゴメンね、大和。
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