心の力。
時速約900㌔・高度1万メートル上空。
とても胸が熱くなっていました。
遅ればせながら、その時の出張のお供に「クローズド・ノート」を連れて行きました。
映画化された時の沢尻エリカさんの記者会見が映画それ自体よりも、あまりに有名になった事もあり、原作本を購入していた事も忘れていました。
片道12時間。
これなら、眠くならなければですが、片道でハードカバー2冊と文庫本1冊が読めると判断。
往復でも帰路は疲れがあるとも考え、ハードカバー3冊と文庫本2冊としました。
今週は1週間連続の長期出張となります。
また、ジプシーの様な生活。
慣れたホテル暮らしですけれど、味気ないものです。
会社の業務ですから、経費の事もあり、そうそう高いホテルにいつもいつも泊まってはいられません。
でも、ビジネスホテルのベットとテレビとユニットバスだけの味気ない部屋はどうにも好きになれません。
なんだか、監獄に入っているようです(監獄入りの経験は幸いありませんが)。
また、今回はもう雪が降っている様な場所にも行かねばならず、電車やバスを利用してというわけには行きません。
これ、何が残念かというとせっかくの移動時間に読書が出来ないのです。
まあ、近頃のレンタカーは必ずCDもついているので、買いだめしておいたCDにゆっくり付き合ってもらう予定です。
東京は暖かい日が続きますが、朝晩は12月らしい日もありますね。
この時期の雨はとても冷たく感じます。
さて、人は誰かに認めてもらえないと、とっても生きているのが辛くなります。
おーなり由子さんの「天使のみつけかた」にこんな表現があります。
ある日は
とても
ひとりっきりの
きもちがした。
心がひりひりした。
じぶんが、いらないもののようであった。
「天使のみつけかた」 おーなり由子
すごく的確な表現ですよね。
これは天使だった男の子が人間になり、女の子に恋をした時の気持ちなのです。
けれど
あの女の子を見かけると
地上は一気に天上のように輝いた。
一日中、げらげら笑いたい日もあった。
「天使のみつけかた」 おーなり由子
これぞ恋した時の気持ちですね。
恋する人に自分の存在を上手に認めてもらえない時は、なんとも苦しい事です。
やりばの無い気持ちに困りますよね。
ほんとに、せつなくなります。
同僚で会社帰りに食事をして帰った時に、たまたま読んだ本の話がありました。
まあ、見栄もあってビジネス本を上げる人も多かったのですが、私は「クローズド・ノート」と話したのです。
最近では一番良かったと思ったので、素直にそう言ったのです。
そうしたら、一緒にいた他の課の課長さんが、大きな声で「あ~いいよな、俺も伊吹賞欲しいよ」と言ったのです。
胸を片手で2回、トントンと叩くしぐさをしながら。
ストーリーに出てくる「真野伊吹」先生が認定する賞が「伊吹賞」です。
それから、それはなんだ、なんだ、なんて話になりました。
「真野伊吹」先生は小学校4年生のクラス担任の先生です。
伊吹賞とは例えば、忘れ物の多い子供が1週間忘れ物をしなかったら伊吹賞。
掃除のときに窓の桟まで拭いている女の子に伊吹賞。
みんなを笑わせるひょうきんな子に伊吹賞。
学級文庫をよく読んでいる子に伊吹賞。
帰りの会で先生が「本日の伊吹賞は…」なんて発表します。
子供はどきどきわくわく、自分の名前が呼ばれるのを待っています。
伊吹賞のシールが多くなって行く事を、子供達は楽しみします。
誰かに認めてもらえる事。
これは年齢を問わずうれしい事ですよね。
そして、この本に出てくる言葉「心の力」。
何かをするのに頑張ったり、最後までくじけなかったりする意志の強さとか我慢強さというようなことから、相手を思いやること、お互いに信頼し合うこと、励まし合うこと…といったことまで、この「心の力」という言葉…
「クローズド・ノート」 雫井 脩介
「心の力」がスランプになる。
この小説は他に伊吹先生の恋も同時進行で進みます。
伊吹先生が大切な人の、何気ない事にとても喜んでみたり…。
不安になったり…。
疑心暗鬼になったり…。
登校拒否になる子供とのやりとりや、自分の恋で気持ちが不安になる事。
誰もが完全無欠ではない事。
誰でもが当たり前にある、そんな人間くさいところがたくさんあります。
いつもはやさしくできるのに…。
いつもはもって話を聞いた上げられるのに…。
いつもはこんな自分勝手なわがままばかり言わないのに…。
いつもはもっと元気よくしていられるのに…。
「心の力」がスランプになって、いつもと違ったり、いろんな事が嫌になったり、誰にでもある事ですよね。
私がこの小説に参ってしまった気持ちが、少しでも伝わりましたでしょうか。
枠外である、最後の最後にある衝撃の事実も、私には大きかったのです。
著者である雫井さんのイメージが「犯人に告ぐ」とまったく異なってしまった事も驚きでしたが、これが携帯小説であった事も驚きでした。
帰国してから、映画のDVDをすぐ見ました。
辛い事…。
やりきれない気持ち…。
哀しい事…。
胸を片手で2回、トントンと叩くしぐさをしながら、私も「心の力」を呼び覚まします。
思いやりの「心」をあたたかくて強い「力」にすることができる4年2組のすばらしい子どもたち。
いつまでもその「心の力」を持ち続けて下さいね。
「クローズド・ノート」 雫井 脩介
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