どこかで、誰かが…
寒空に短いスカート姿で、女の子が声高に叫んでいます。
「本日、カードをお作り頂くと100ポイントを進呈します」
信号が変わって人通りが少し遠のくと、彼女は人が変わった様に静かになりました。
そして、うつむき加減に自分の爪を見ています。
大阪の別宅で食事をしなければならない時は、スーパーに立ち寄ります。
そんな日は、クリーニングを取りに行ったり、ドラックストアに寄って不足していた洗濯洗剤を買ったりと、出来る時にと様々な事を詰め込みます。
レジで精算をする時に、他にも抱えている袋があるとレジの担当の方が、私がもたもた代金を準備している間に、購入した商品を袋詰めしてくれる事があります。
とても有り難くて、そんな時ははっきりとお礼を申し上げます。
大阪の事務所は誰でもが知っている大きなホテルの隣にあるビルです。
大きなビルが周辺の道路を取り囲む様に建っています。
周辺の道路から入ってくる車と歩道を歩く人の警備をする人がいます。
人の通行を止めて車を入れる時、彼はとても恐縮し、その後に足をとめた人々に深々とお辞儀をします。
それは暑い夏の日も、雨が降る日も、寒い日も同じです。
大阪の別宅近くには保育園があります。
決して早くはないその時間、迎えに来たお母さんと手をつなぎ、何やら楽しそうに話しながら帰る子供を見ました。
お母さんを見上げながら、まとわりつきながら歩いていますが、とても楽しそうです。
そこは明るいコインランドリーで、洗濯が終わるの待っている青年がいます。
足を組んで何も言わず、中空をみつめています。
イエスはゴルゴダの丘に自分を貼り付けにする十字架を抱えて歩いている最中に、途中で力尽き座り込みます。
その時、刑場まで付き添うローマ兵が見物をしている近くに人に、イエスに水を与える様にと命令します。
誰もが躊躇するなかで、ひとりの男が「おまえ」と指定されます。
彼はイエスに近づき、恐る恐る水を差しだします。
イエスはそこまで来るまでの間にも傷つけられ、蔑まされています。
彼が水をイエスに差し出した時、イエスは彼に応えます。
私はあなたの苦しみを、その苦しみを一緒に背負いたい。
今夜も、明日の夜も、その次の夜も…。
あなたが辛い時、私はあなたの辛さを共に背負いたい。
その時世界中で、イエスを助ける人はどこにもいません。
世界中で誰一人、自分の味方がいない世界で、水を差し出してくれたのは彼しかいないのです。
彼はイエスが水をむさぼり飲んだり、蔑む言葉や、絶望を口にすると考えていたのです。
しかし、自分の身が死に直面している時に、今この世界でただ一人自分を支えてくれるその人の事を祈ったのです。
爪を見つめる少女の事を「大変な仕事だね」と思ってくれている人がいるかもしれない…。
商品をレジ袋に詰めてくれる行為を、とても親切と感じて感激している人がいるかもしれない…。
この道の安全はあなたのおかげだと思っている人がいるかもしれない…。
私が立ち止って、夜空に浮かぶ星を見上げる時、誰かが星に思いを寄せる私の事を考えていてくれるかもしれない…。
あなたが生きている事が、生きる勇気になっているかもしれない…。
懸命に生きるあなたが、励みになっている人がいるかもしれない…。
どこかで、想像も出来ないところで、誰かが思ってくれているかもしれない…。
気が付かないだけで、多くの思いがあるかもしれない…。
まだ届かない、たくさんの気持ちが、思いがあるかもしれない…。
きっと、この世は捨てたものじゃない。
そんな誰かから、そんな誰かへ。
Merry Christmas
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